唐突ですが、ハンググライダーってご存知ですか。
↓皆さんのイメージはこんなやつでしょうか。 凧にぶら下がって飛ぶアレです。
↓最近のハンググライダーってこんな感じです。
だいぶ進化しました、ちょっとカッコよくないですか(笑)
TV番組の鳥人間コンテストのイメージで、ハンググライダーって飛び立ったら滑空して降りるだけ、って思ってる人が多いですよね。でも、ハンググライダーって上昇できるんです。道具も技術も進歩して、上昇気流に乗って上空1000〜2000mまで上昇し2〜3時間飛ぶのも当たり前になってるんですよ。エンジンもないのに人が空を飛べるなんてちょっとすごくないですか。
私は大学入学と同時ににハンググライダーを始めました。最初は「空飛ぶってどんな感じだろ?」ぐらいの軽い好奇心でしたが、みるみるのめり込んでハンググライダー一色の毎日になりました。バイトしてるか空飛んでるかみたいな学生生活です。授業にもさっぱり出席しなくなって留年もしました。社会人になってからも変わらずハンググライダー中心。かれこれ20年以上、人生の半分近くを空飛ぶことに費やしたことになります。空を飛ぶことはまぎれもなく私の生きがいでした。
まえおきが長くなりましたが、今回のテーマはハンググライダーの魅力…ではなくて、ちょっとした目標設定で日々の生活に潤いを…といった観点で話を展開してみようと思います。
かつて私にとって空を飛ぶことは、日々の生活においても絶対的な最優先事項でした。それが長年当たり前だったので、逆にそういった一本の芯のようなものがない生活って、なんか不安です。目的を見失ったような喪失感というか、何をしたらよいのか分からない、という感覚です。エネルギーはあるのにぶつける先がない、そういった時間の浪費感と焦燥感です。
私は目的のない生活に弱いのかもしれません。
と言っても、そんなたいそうな目的は不要。 ちょっと頑張れば手の届く夢がひとつあれば十分と思います。そんな夢や目標をひとつ設定するだけで、日々の生活にも意味が付加される気がするんです。
話は飛びますが、SF映画の金字塔“ブレードランナー”のラストシーン、ご存知でしょうか。戦闘用の人造人間として生まれたレプリカントが寿命を迎えて最期の台詞を口にします。
「俺はお前ら人間には信じられないものを見てきた。オリオン座の近くで燃えた宇宙船や、タンホイザー・ゲートのオーロラ。そういう想い出もやがて消える。時が来れば、雨の中の涙のように……。その時が来た。」
殺人マシーンとして凄惨な人生を送ってきたレプリカントなのに、最期に口にしたのは人には想像もできないような美しい光景を見てきたという感動経験でした。「人生は捨てたもんじゃない」という“生”への称賛を詩的な言葉でつづったんです。宇宙の果てで目にした美しい光景が殺人マシーンの人生にも価値をもたらしたってことですね。
この映画を見た当時高校生だった私には正直ピンとこなかった。だって考えてみて下さい、ただ「絶景を見たことあるぞ」ってだけですよ。それだけで殺人マシーンの血まみれの人生を肯定できるんですか?
でも、歳を重ねたせいか共感を覚えるようになりました。私も死期が近いのでしょうかね(笑)
言葉を選ばずに言えば、いまの私の生活はクソです。生きるためにやってる時間の切売りです。でも、そこに何か目標を設定してみましょう。たとえば「オレは退職したらクルーズ船で世界一周するんだ」とか。すると途端に日々の生活が意味あるものに思えませんか?クルーズ船への布石になるのですから。
過去、私はハンググライダーで日本代表として世界選手権への出場を目指してました。本気でオレはマッターホルンを見下ろして飛ぶんだと信じていました。実際そのための準備をして2015年にはそのチャンスをほぼほぼ手中に収めるところまで昇り詰めていました。…最終的にはチャンスをモノにできなかったわけですが。
ただ、そんな高みへの挑戦が長らく私が生きる原動力でした。
↓写真は国内のハンググライダーのレース中の光景です。
長年磨き続けた自分の技と経験、フライト仲間やサポート体制、滅多にない絶好の気象条件、たくさんの偶然と必然が重なってこの時私は上空2000mの絶景の中にいました。空を飛ぶことが当たり前になっている私にとっても、この景色は奇跡です。夢中で没頭していれば時折こんな奇跡に出会えました。まぎれもなく私の生きる原動力でした。
誰の目も届かない上空で、一歩間違えば即死の緊張感とレースの興奮、360°見たこともない絶景につつまれた高揚感と孤独。一生忘れることができない体験、私のタンホイザー・ゲートです。
ハンググライダーは最近やめてしまったので、マッターホルンはもう過去の夢ですが、次の原動力は↓これです。
私はノルウェーのこの光景を目指します。ヨメさんと2人バイクでこの景色を眺めに行くんです。深い意味なんてありません、ただ見たいだけ。とにかくこの夢を原動力に私は進みます。今のクソみたいな時間の切売り生活も夢を実現するためのだいじな布石だと信じます。かなえてみせますよ、きっと。
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