最近「エンゲージメント」というワードを耳にする機会が増えました。エンゲージメントとは会社貢献意欲と訳せます。エンゲージメントは労働生産性と相関があり、世界的に見て日本は両方とも非常に低い。日本人の熱意ある社員はたった5%です。総務省もエンゲージメントの向上が急務だとのべています。
デラえもんは自動車メーカーの中間管理職。毎年「社員意識調査」が実施されて、エンゲージメントの低さを人事部に指摘されます。
人事「あなたの部署はエンゲージメント低いですね、エンゲージメントを上げてください」
ん?その業務命令おかしくないすか?
エンゲージメントって聞きなれない英語だからなんかごまかされるけど、日本語で言うと「もっと会社への貢献意欲を高めろ!」ということ。
エンゲージメント低いってのは、すでに従業員は会社に対して信頼を失って心が離れつつある状態。なのに会社が「オレにもっと忠誠しろ!」って従業員に命令するのって…なんか勘違いしてませんか?
エンゲージメントが下がる原因は一般的に↓下記の5つ
・会社の将来が期待できない、ミッションが浸透していない
・評価されない、承認欲求が満たされない
・ワークライフバランスが悪い
・給与や待遇に不満
・業務アサインが不適切
これらは従業員の問題ではなく会社の問題。それを棚に上げて「エンゲージメント上げろ!」なんて的外れ。
エンゲージメントって会社が自ら獲得する物であって、従業員に要求するものじゃない。
もっと言うと、中間管理職って実は会社内でいちばんブラックなポジションのひとつ。労働組合の傘から放り出されて残業代もつかず、従業員に任せられないような理不尽な業務ばかり負わされています。実は社内でエンゲージメントがもっとも低いのは中間管理職なんです。
その中間管理職に対して「お前んところの部下のエンゲージメント上げろや」なんて、お門違いもいいところです。ひょっとして中間管理職は会社に絶対服従だとでも思ってるんですか?そんなやり方じゃ逆効果、エンゲージメントは下がる一方です。
ところで、「エンゲージメントと企業業績に関する研究」によると、社員エンゲージメントが1ポイント向上すると営業利益率が0.35%向上する、なんて報告があるそうです。「与えられた目の前の仕事だけを頑張れば会社は成長していく」という時代はとっくに終わって、今は社員自ら課題を見つけて解決しているよう業務姿勢を期待されています。だから、エンゲージメントUP!で労働意欲・労働生産性を向上しようぜ!っていうわけです。
じゃ、会社は本気でエンゲージメントを改善しようとしているのか?というのが次のポイントです。
エンゲージメントが企業収益に影響するという考え方は一般にも知られるようになったので、最近いろんな企業で役員報酬がエンゲージメントに連動するようになってきました。
パナソニックはニュースでも取り上げられて話題にもなりましたね。ほかにもSUBARU、セブン&アイ、日興証券、いろんな業界で注目されています。
日経新聞:「役員賞与に社員の働きがい反映 パナソニックHD系」
当然 株主もエンゲージメントのスコアを着目し始めています。
では、エンゲージメントの向上の目的はなんでしょうか?
会社の経営陣は本当にエンゲージメントの向上で業績アップを目指しているのでしょうか、あるいは株主対策ですか?
デラえもんが思うに、経営陣は本心ではエンゲージメントで業績UPするなんて思ってません、自分事として真摯に取り組んでない。そんなの社内にいれば肌で感じます。でも株主がうるさいし世の中の流行りだしってことで仕方なく「ウチの会社もやっとくか」っていうだけです。めんどくせーから中間管理職にやらしとくか、ってところでしょう。
つまりエンゲージメントUPなんて株主対策のパフォーマンス、とデラえもんは思ってます。
従業員はいま、給料も上がらず・キャリア形成も出来ず・将来の保証もない、そんな待遇。本来はエンゲージメントの獲得は経営課題です。なのに経営陣は株主の顔色ばかり伺って従業員の待遇なんてお構いなし、そのうえ“経営課題”まで従業員に丸投げし始めています。
バカにしないでほしい、従業員はちゃんと見てますよ。だからこそエンゲージメントがますます下がっていくんです。
経営陣は気づくべきです。一部上場の大企業でも、もう選ばれる側じゃないんです。従業員に選んでもらえるよう真摯に取り組むべき。
そして従業員は冷静に考えるべきです、この経営陣のかじ取りに自分の会社員人生を任せていいのか?家族の生活までフルベットしていいのか?
以上が、デラえもんに見える景色です。
しかし、職場ではエンゲージメントが株価対策だと考えている者は誰もいません。みんなエンゲージメントUPさせて事業貢献するにはどうしたらいいか大真面目に考えています。経営陣の命令にしたがって、統括部長以下大勢の管理職が議論しています。健気に意識高い系の議論と活動に時間を投じています。
ただ、素直に取り組んでいるのをけなすようで忍びないのだが、
ちょっと俯瞰して欲しい。
①経営陣はなぜエンゲージメントを向上させろというのか?
②それは本当に現場が対応すべき課題なのか?
業務命令だからって なんでもフルスロットルで取り組んでいては身体が持ちません。ときには「それはオレたちの仕事じゃない、経営課題だろ」と打ち返すべきです。
みんな素直すぎます。素直と言えば聞こえはいいが思考停止です。それが従業員に無駄な労役を強いることになります。生産性ゼロです、いやマイナスです。
課題構造を俯瞰してみませんか。そうすれば自分の時間を投じる価値があるかどうか“自分”で判断できる(かもね)というお話でした。
思考停止、ダメ絶対!
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